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チャイニーズレストランにて

 私は、怒らない。それは今もだ。野暮ったいお前が目の前にいる今もだ。朝からずっと、氷みたいな雨が降っているし、昨晩はコンビニで、強盗と間違えられた。部屋中を探しても、靴下の片方だけが見つからない。それでも私は気持ちを乱さない。台所では、洗い忘れていた皿が3枚ともすべてブロッコリーになっていた。もちろん、捨てた。燃えないゴミなのか、燃やせるゴミなのか。そんなことは、どうでもいい。それよりも、玄関のドアに、人糞がびっしりとついている。ついているなんてものではない。念入りに塗られている。仕上げの巧みさが正気ではない。誰の仕業か知らないが、これがユーモアだとすれば、この主謀者とは友人になれないだろう。神に問いたい。何かいい気分転換はないだろうか。シャワーは3日前から壊れていて、管理人は昨日から電話に出なくなった。階下では郵便配達員が倒れている。仰向けで。サイレンの音が次第に近づいてくる。ポスターの中の女が服を着始めている。私は嫌われたくない。  いけない、もうこんな時間だ。君と語り合っているヒマはない。失礼する。また逢おう。  そうそう、男はそう言い放ち、足速に人混みへ紛れていった。魚が川に帰るように景色の中へと消えていったんだ。  僕の話を信じてくれたのだろうか。目の前の君は事実かどうか興味がない様子で、〆の雑炊をオーダーする。そして目を合わせて、こう言った。  「食事中にする話題ではない」と。

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飲み残されたビールの未来はオレタチが思っているほどヤワじゃない。射的で奪取できなかったエロジッポのため息は、静かに子供たちの耳たぶをかすめる。パテシエがこぼしたスペシャルソースは、乙女たちのハートではなく脳ミソに悪知恵をほのめかす。間違ったバイキングは、おかわりされない。お...

パーティー

そらみた 青ざめた ためになった なかなかのなかになれ マシンガンが火を吹いて パーティーが幕を開ける アドベンチャーの記憶を 清潔なシーツに染めよう 酒瓶を天に放り込み マグマの蓋が割れる 一斤の角食に掲げたネッカチーフは 大いなる自由の印 すべてはまわり続ける...

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