2026.0605 金
いま、なんか飛んでたな。 父が言った。 彼は今、 特別養護老人ホームにいて パーキンソン病で レビー小体認知症がある。76歳。 幻視という 存在しないものが見えるという 症状があると言われている。 いま、なんか飛んでたな。 父がそう言ったとき うん、なんか飛んでたと答えた。 はなしを合わせたわけではない。 偶然かもだけど、 ぼくも 同じことを感じていた。 ただ言わなかっただけだ。 なんかの 光の反射かもしれないし、 なんかしらの エネルギーみたいなもの なのかもしれない。 鳥でも虫でもない。 不確定で 一瞬のことだったし 今べつに 関係ないから ぼくは言わなかった。 父は、 なんか飛んでいた。 そう感じたことを 言葉にしただけだ。 症状のひとつなのか 思ったことを 口にするようになっている。 言う言わないの パッキンがペカペカしている。 そのせいか お前、いい顔しているな。 歳を重ねた男の顔に なってきたぞ。 なんて言ってくることもある。 もともと 口数の少なかった父に そんなこと言われたのは 初めてで 照れくさかったけど うれしかった。 彼は










